システム開発の見積もりでよく使われる「人月」は、技術者の単価に投入期間を掛け合わせて算出する考え方だ。要件定義・設計・プログラミング・テストといった工程ごとに必要な人月を積み上げ、その合計が見積額になる。
中小企業の経営者からすると、なぜ1か月でこの金額になるのか、なぜこの工程にこれだけの期間が必要なのか、技術者によって単価が違うのはなぜか、といった疑問が尽きない。パッケージ製品のような定価が存在せず、オーダーメイドの開発は契約してから作り始める性質上、他社と同条件で比較しづらく、金額の妥当性を判断しにくい構造になっている。
実は人月という考え方に戸惑っているのは発注側だけではない。成果物ではなく作業量を基準に算出し、技術者のスキルによって単価が変わり、最終金額も事前には確定しにくいという特性上、営業として何度説明しても双方が完全に納得したと言い切れる場面は多くなかった。
「全部パッケージやクラウドサービスにすればいい」という意見もあるが、独自の業務プロセスを持つ企業や業界特有の取引形態がある企業、既存システムとの連携が複雑な企業では、オーダーメイドの開発が今後も必要とされ続ける。
大切なのは人月の仕組みを完全に理解することではなく、何に対価を払っているのか、どの工程が本当に必要なのか、代替手段はないか、金額は妥当かを把握したうえで発注する姿勢だ。ITアドバイザーとしては、こうした問いをベンダーに投げかけられる状態をつくることで、経営者が「賭け」に近い投資をせずに済むよう支援したいと考えている。
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