note19:クラウドか?オンプレか? 岩手の中小企業で起きた『本末転倒』の話


「クラウドとオンプレ、どっちがいいのか」は岩手の中小企業経営者から今もよく聞かれるテーマだが、この問いの裏には「手段」が「目的」にすり替わってしまう根深い問題が隠れていることが少なくない。本来はやりたいことがあって手段を選ぶはずが、選択の議論そのものが目的化し、何のために検討していたのかが置き去りになってしまうのである。

岩手ならではの事情も、この議論を難しくしている。岩手県は北海道に次ぐ広さを持ち、盛岡市内に本社を置く企業でも沿岸部や県南・県北に事業所を抱えるケースは珍しくなく、拠点間で同じ業務システムをどう共有するかは現実的な課題である。さらに東日本大震災の経験から、「大事なデータや設備を一か所に集中させることへの怖さ」を感じている経営者も多く、ITの選択においても「いざというとき大丈夫か」という不安がほかの地域以上に強く出やすい。

実際にあった事例では、特定の部署だけで使っていた管理システムを他部署や別拠点からも使えるようにしたいという要望から、複数拠点からのアクセスのしやすさ・短期導入・バックアップ体制を条件にクラウド利用を前提とした計画が進んでいた。ところが途中で「回線が切れたら業務システムが使えなくなるのでは」という不安の声が上がり、最初に全員で合意していたはずの出発点が置き去りになりかけた。その後、なぜこの検討を始めたのか、不安の中身は具体的に何か、どのくらいの確率で起こりうるのかを一つずつ丁寧に整理していったことで、最終的には当初の計画通りに進めることができた。

ITは論理の積み重ねのように見えても、現場では関係者の感情や正体のはっきりしない不安が、積み上げた計画を思わぬ方向に動かしてしまうことがある。年度の節目などの機会に、「本来の目的やあるべき姿に対して、実現できていないことはないか」と立ち止まって問い直してみることが、こうした本末転倒を防ぐ第一歩になる。

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