岩手のIT業界では、学生の多くが県外のIT企業に就職してしまうという構造的な人材不足が以前から続いてきた。しかし近年はそれとは別に、地元企業に就職した若手が「岩手の仕事に携われていない」という、ねじれた状況が広がっている。県内にIT人材はいるのに、県内中小企業のIT化にはほとんど関われていないのが実情である。
背景にあるのは業界構造の変化だ。かつては企業ごとの仕様に合わせたオーダーメード開発が主流で、多くの技術者と工数を要したが、会計・給与・生産管理などの業務パッケージやSaaSが普及したことで、中小企業のニーズは個別開発からパッケージ利用へと大きくシフトした。その結果、受託開発を主力としてきた地元ベンダーは仕事量が減り、県外案件に頼らざるを得なくなっている。首都圏の大手IT企業が岩手に進出するケースも増えているが、そこでの仕事の多くは岩手県内の中小企業向けではなく、地元人材はますます県外案件に従事することになり、地元の中小企業を支える人材はむしろ不足していく。
この状況を変えるために、今後求められる役割は大きく3つあると考える。一つ目は、ITと経営の両方を理解し、中小企業の「IT経営」を支える人材。単なる社内情シスではなく経営に近い立場でIT投資の判断に関わることで、業務効率化を後押しできる。二つ目は、日々生まれる新しいITサービスの情報を収集し中小企業に届ける「IT商社」としての役割。多くの地元ベンダーではセールス人材自体が少なく、情報が県内の隅々まで行き届いていないのが実態である。三つ目は、業務パッケージでは補えない部分をノーコード・ローコードや設備工事などの技術作業で支える役割で、単価が低く主力事業になりにくい分、他ベンダーとの連携や中小企業からの直接受注が鍵になる。
この3つの役割が岩手に根付けば、IT人材の県外流出を抑えながら、県内企業の仕事に幅広く参画できるようになり、中小企業のIT化やDXが進み、地域全体の競争力向上にもつながっていく。まずは「地元の企業を支えるIT人材」を増やすことが、岩手の未来を変える第一歩になる。
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